住宅取得等資金の贈与時の相続時清算課税の選択

2013年に父から住宅取得等資金の贈与を受け、同じ年にそれとは違う財産の贈与も受けました。この場合において住宅取得等資金の贈与に関して相続時清算課税を選択すると、それとは違う財産の贈与に関しても相続時清算課税の適用を受けることとなるのでしょうか?

住宅取得等資金の贈与のみならず、それとは違う財産の贈与も、同じ者から同じ年に受けた場合、住宅取得等資金について贈与税の課税価格に算入される金額が存在するなら、住宅取得等資金の贈与に関して相続時精算課税を選択すると、それとは違う財産に関しても相続時精算課税の適用を受けることとなります。

ちなみに、2012年1月1日から2014年12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受けた場合において、それぞれの特例の要件に該当するときは、相続時清算課税だけでなく、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例に関しても併せてその適用を受けられます。

 この場合には、まず、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例の適用による非課税額を住宅取得等資金の額から差し引き、その次に、控除しきれなかった住宅取得等資金の額とそれとは違う財産の額を合計します。その後、その合計額から上限を2,500万円とする相続時清算課税の特別控除額を差し引きます。これらの控除によっても控除しきれなかった残額に対しては、贈与税(一律20%)が課税されるということになります。

相続税の総額はどのように算出されますか?

相続税の計算に際して、相続税の総額は、いかにして算出すればいいでしょうか?

まず、相続、遺贈又は相続時清算課税の適用を受ける贈与で財産を取得した人ごとの課税価格(千円未満は切り捨てます)を合計した金額から、基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)を差し引いた金額が、課税される遺産の総額ということになります(法定相続人の数については、相続を放棄した人が存在する場合にも、その放棄はなかったものとして取り扱われます。そして、養子である法定相続人については、被相続人に実子が存在すれば養子のうち一人までが法定相続人として扱われ、被相続人に実子が存在しなければ養子のうち二人までが、法定相続人として扱われます)。
 続いて、各法定相続人が、民法に規定のある法定相続分に沿って財産を取得したと仮定し、各法定相続人の取得金額を算出すると、上記の課税遺産総額に各法定相続人の法定相続分を乗じたものが、その取得金額となります(千円未満は切り捨てます)。
 この法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額に税率を乗じたものが、各法定相続人の算出税額となりますので、この算出税額を合算すると、相続税の総額となります。

相続時精算課税の特例の適用対象に入る受贈者

相続時清算課税選択の特例の適用を受けることができる受贈者の要件を教えてください。

次に掲げる要件全てに該当する受贈者は、相続時清算課税選択の特例の適用を受けることができます。
1.次のいずれかに当てはまる者であること。
(1)住宅取得等資金をもらった際に日本国内に住所があること。
(2)住宅取得等資金をもらった際に日本国内に住所がないものの日本国籍を持っていて、かつ、受贈者か贈与者の住所がその贈与の前5年以内に日本国内にあったことがあること。
(3)住宅取得等資金をもらった際に日本国内に住所がなく、かつ、日本国籍も持っていないが、贈与者の住所が日本国内にあること(この要件は、2013年4月1日以降の贈与で取得する財産に係る贈与税に関してのみ適用されています)。
2.贈与者の直系卑属である推定相続人であること。
3.財産をもらった年の1月1日の時点で20歳以上であること。

ちなみに、相続時清算課税選択の特例は、2014年12月31日までに、親から住宅取得等資金をもらい、もらった年の1月1日の時点で20歳以上である人が、次の要件のいずれかに当てはまる場合に、贈与者(親)が65歳未満であっても、相続時清算課税制度を選択することができるというものです。ただし、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例の適用を受けるのなら、その特例の適用を受けた後の住宅取得等資金について、贈与税の課税価格に算入される住宅取得等資金があるときに限り、相続時清算課税選択の特例の適用を受けられます。

・住宅取得等資金をもらった年の翌年3月15日までに、その全額を住むための家屋の新築か取得のための対価として用いて新築か取得をし、同日までに自分が住むために使用したとき又は同日以後に自分が住むために使用することが明らかであると見込まれるとき
・住宅取得等資金をもらった年の翌年3月15日までに、その全額を自分が住むために使用している家屋について行う一定の増改築等の対価として用いて増改築等をし、同日までに自分が住むために使用したとき又は同日以後に自分が住むために使用することが明らかであると見込まれるとき

住宅取得等資金の相続時清算課税が適用できる要件

住宅取得等資金の贈与を受けました。住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時清算課税選択の特例を適用するためには、贈与を受けた者が翌年の3月15日までに、その資金で取得した家屋に住まなければならないとのことですが、この期限が延長されることはないのでしょうか?

それ以降遅滞なく取得した家屋を住居用として用いることが明白であると認められる場合は、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時清算課税選択の特例を適用することができます。

すなわち、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時清算課税選択の特例を適用するためには、贈与を受けた者が贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、その取得した家屋に住む必要があるのですが、そのときまでに住むことができなくても、それ以降遅滞なく取得した家屋を住居用として用いることが明白であると認められれば、この特例の適用を受けられます。
 なお、贈与を受けた者がその住宅取得等資金を充当することにより取得した家屋を、贈与を受けた年の翌年の12月31日までに自らの住居用として用いていないのであれば、その日から2ヶ月を経過する日までの間に修正申告書の提出を行い、かつ、増加した税額の納付をしなければなりません。

居住用財産買換特例の旧居住用財産譲渡の譲渡利益

居住用財産の買換えを行い、居住用財産の買換えの特例の適用を受けると、譲渡した居住用財産(かつての居住用財産)の譲渡益に対する課税が繰り延べられると聞きました。この買い換えた居住用財産を将来譲渡した場合における譲渡所得の計算上の取得価額について教えてください。

この買い換えた居住用財産を将来譲渡した場合における譲渡所得の計算上の取得価額は、譲渡したかつての居住用財産から引き継がれた取得価額ということになります。買い換えた居住用財産の実際の購入価額ではありません。
 なお、この引き継がれる取得価額の計算に関しては、居住用財産の売却額と買い換えた居住用財産の購入額のいずれの額が高いか、又は同額であるかに応じて、計算方法が違ってきます。

相続税がない場合の相続時清算課税制度の長所

相続時清算課税制度では相続の際に精算を行うことから、納める相続税と贈与税の合計額は同一になり、後々相続税が課される人にとっては相続時清算課税制度の利点はないということでしょうか?

相続時精算課税制度は、生前贈与をしやすくするという利点を持っています。すなわち、相続時精算課税制度を選択することで、相続が発生する前でも生前贈与によって、贈与税を負担せず、子に渡したいときに資産を渡せるようになります。
ちなみに、相続の際の精算においては、贈与財産を贈与の際の価額により相続財産に合算します。

相続時清算課税財産の贈与者の死亡による相続税計算

財産をもらって相続時清算課税を選択した受贈者は、その財産の贈与者が亡くなったとき、贈与財産の価額と相続財産の価額を合計した金額を基に相続税額を計算すると聞きました。この贈与財産の価額というのは、相続時の価額でしょうか?

相続財産の価額と合計する贈与財産の価額は、相続時の価額ではなく、贈与時の価額です。

 相続時清算課税を選択した受贈者は、贈与時に贈与財産に関する贈与税を納め、贈与者が亡くなったときにその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合計した金額から相続税額の計算をし、それまでに納めた贈与税額をその相続税額から控除することで、贈与税と相続税を通じた納税を行います。

 ちなみに、課税価格を合計した額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告をする必要はありません。このような場合においても、相続時清算課税による贈与財産について、それまでに納めた贈与税額が存在するときは、相続税の申告を行うことによって還付を受けられます。

年途中で贈与者の死亡による相続時清算課税の適用

財産をもらった年の中途において贈与者が死亡した場合、相続時清算課税の適用を受けることは可能でしょうか?

このような場合にも相続時清算課税の適用を受けることは可能ですが、相続時精算課税選択届出書の提出期限と提出先が通常の場合と異なることとなります。

財産をもらった年の中途において贈与者が死亡した場合において、相続時清算課税の適用を受けるときには、相続時清算課税選択届出書の提出期限は、次のうちのいずれか早い日となっています。
1.贈与税の申告書の提出期限(通常は、財産をもらった年の翌年の3月15日となります)
2.贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限(通常は、贈与者について相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月が経過する日となります)
また、上記のときにおける相続時清算課税選択届出書の提出先は、贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長となっています。
 ちなみに、相続時清算課税選択届出書の提出期限が上記2になるとき、贈与者の死亡に係る相続税の申告書を提出するのであれば、相続税の申告書にこの届出書を添付しなければなりません。そして、相続税の申告書を提出する必要がなくても、相続時清算課税の適用を受けるには、提出期限までにこの届出書を贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出することが必要となります。

 なお、相続時清算課税選択届出書には一定の書類を添付することとされています。

養子になる前/後の相続時清算課税の適用とは

2013年2月に私はある人から財産の贈与を受け、同年6月にその贈与者と養子縁組をしました。その後、同年11月に再びその贈与者から財産の贈与を受けました。この場合、これらの2度の贈与に関して相続時清算課税の適用を受けることは可能ですか?

2013年1月1日において、贈与者が65歳以上で、かつ、あなたが20歳以上であり、2013年の贈与について相続時清算課税を選択したのであれば、2月に受けた贈与に関しては相続時清算課税の適用を受けることは不可能ですが、11月に受けた贈与に関してはその適用を受けることが可能であるといえます。
ちなみに、この場合の2月の贈与に関する贈与税額は、暦年課税によって計算することとなり、110万円の基礎控除を受けられます。一方、11月の贈与に関しては、相続時清算課税によって贈与税額を計算することになります。

年の中途に養子縁組等で贈与者の推定相続人となり、この年の1月1日現在で、贈与者が65歳以上、その推定相続人が20歳以上である場合に、推定相続人となる前及び推定相続人となったとき以降の2度にわたりこの年に財産の贈与を受け、この年の贈与について相続時清算課税を選択すれば、贈与者の推定相続人となる前の贈与に関しては相続時清算課税の適用を受けられませんが、推定相続人となったとき以降の贈与に関してはその適用を受けることが可能です。

相続時清算課税選択届出書の提出期間

財産をもらった人が相続時清算課税制度を選択する場合に提出する相続時清算課税選択届出書の提出期間は、いつなのでしょうか?

相続時清算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して提出すべき期間は、相続時清算課税制度を選択する贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで、すなわち贈与税の申告書の提出期間です。

財産をもらった人が相続時清算課税制度を選択する場合、相続時清算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付の上、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 ちなみに、この相続時清算課税選択届出書に添付すべき書類は、次の通りです。
1.受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類であり、かつ、次に掲げる内容が明白となるもの
(1)受贈者の氏名・生年月日
(2)受贈者が贈与者の推定相続人であること
2.受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類であり、かつ、受贈者が20歳となった時点以後の住所又は居所が明白となるもの(受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所が明白となる書類でも支障はありません)
3.贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写し等)であり、かつ、次に掲げる内容が明白となるもの
(1)贈与者の氏名・生年月日
(2)贈与者が65歳となった時点以後の住所又は居所(贈与者の平成15年1月1日以後の住所又は居所が明白となる書類でも支障はありません)

相続時清算課税選択届出書を出す前に贈与者が死亡

財産の贈与を受けて相続時清算課税を利用できる人が相続時清算課税選択届出書を提出する前に死亡した場合、このような受贈者の相続人がその贈与財産につき相続時清算課税を利用できると聞きました。この場合に、受贈者の相続人は相続時清算課税選択届出書をいつまでに提出すればいいですか?

受贈者の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に提出する必要があります。

受贈者が贈与を受けた年の翌年3月15日以前に死亡して、相続時清算課税選択届出書の提出が済んでいない場合に、受贈者の相続人がその贈与財産につき相続時清算課税を利用するためには、受贈者の相続人は受贈者の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に、贈与税の申告書に相続時清算課税選択届出書を添付し、死亡した受贈者の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。

 なお、相続時清算課税選択届出書に添付すべき書類は、以下の通りです。
1.相続時精算課税選択届出書付表(二人以上の相続人が存在するなら、相続人全てがこれに連署することが必要です)
2.受贈者の相続人の戸籍の謄本又は抄本その他の書類のうち、受贈者の相続人全員が明らかとなる書類
3.受贈者の戸籍の謄本又は抄本及び戸籍の附票の写しその他の書類のうち、次の内容が証明される書類
(1)受贈者の氏名・生年月日・死亡年月日
(2)受贈者が20歳になったときから死亡の日までの住所又は居所(受贈者の2003年1月1日から死亡の際までの住所又は居所が証明される書類でも差し支えないものとします)
(3)受贈者が贈与者の推定相続人であること
4.贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写し等)のうち、次の内容が証明される書類
(1)贈与者の氏名・生年月日
(2)贈与者が65歳になったとき以後の住所又は居所(贈与者の2003年1月1日以後の住所又は居所が証明される書類でも差し支えないものとします)

相続時清算課税に対する贈与税額の計算

相続時精算課税における贈与税の課税価格は、いかにして算出すればいいでしょうか?

相続時清算課税の適用を受ける場合における贈与税の課税価格は、相続時清算課税の適用を受ける財産を、その贈与者以外の者から贈与をされた財産と分けて、その贈与者からその年に贈与をされた財産の価額の合計を行います。その合計額が、贈与税の課税価格ということになります。
ちなみに、暦年課税の適用を受ける場合における基礎控除額110万円の控除を、相続時清算課税の適用を受ける財産について、行うことはできません。

そして、相続時清算課税の適用を受ける場合における贈与税額は、贈与税の課税価格から特別控除額を控除した金額を、贈与者ごとに算出をして、その金額にそれぞれ20%の税率を乗じることで、算出することができます。

なお、特別控除額については、贈与者ごとの贈与税の課税価格から、2,500万円(既にこの特別控除の適用を受けて控除した金額が存在するのであれば、その金額の合計額の控除をした残額)又は贈与者ごとの贈与税の課税価格のいずれか少額の方が、特別控除額となります。
ただし、この特別控除額の控除が可能であるのは、贈与税の申告書に、特別控除の適用を受ける額、既にこの特別控除の適用を受けて控除した額が存在するならその額等の必要事項を記載して、その申告書の期限内における提出をした場合に限定されるのが原則です。

暦年課税とは、どのようなものでしょうか?

贈与税の課税方法の一つです。

 贈与税には、暦年課税と相続時清算課税という二つの課税方法があり、このうちの相続時清算課税を活用するためには、一定の要件に合致しなければなりません。

暦年課税では、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額を合算した額から基礎控除額の110万円を控除した残額に対して、贈与税が課税されます。そのため、1年間に贈与された財産の価額を合算した額が110万円以下である場合には、贈与税は課税されません。贈与税の申告も、この場合は必要ありません。